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Maison de Luce Story
1

とあるお金持ちの屋敷の一室で、成人になる娘のパーティーが開かれていました。

来客は皆、娘より年上の人達ばかりですが、それでも楽しく過ごしています。

パーティーが始まって、1時間ほど経った頃、突然部屋の電気が消え辺りは薄暗くなりました。

部屋の奥の扉が開き、1つの灯りが見えました。
ケーキの登場です。

来客の拍手に迎えられて姿を現したケーキは
バタークリームでデコレーションされた豪華な三段ケーキ。

ケーキの一番上には、to my beloved daughter と書かれたホワイトチョコレートのプレート
その両脇には砂糖で作られたウサギが飾られています。

娘がロウソクを吹き消し、皆にケーキが取り分けられました。

一番上の段の飾りのいっぱい付いたケーキを渡された娘は
「ケーキだけでも太るのに、こんな砂糖菓子まで食べたら大変なことになっちゃう」
と笑いながら、ウサギをゴミ箱に捨ててしまいました。


パーティーが終わり、家政婦のおばあさんが後片付けをしていると
ゴミ箱に捨てられている砂糖菓子のウサギたちを見つけました。

ゴミに埋もれ、少し溶けかかっている二匹を見たおばあさんは
なんだか不憫に感じ、おばあさんの家に連れて帰ることにしました。

 

家に着くと早速おばあさんはウサギにヴィフ、ヴィヴと名付け、冷蔵庫にしまいました。

「今日はもう遅いから、明日また会いましょう」

と言って眠りに着きました。

夜中の2時を過ぎた頃でした。
冷蔵庫の中から何やら話し声が聞こえてきます。

ヴィフとヴィヴです。

「あー助かったー。もう少しゴミ箱にいたらもうひとつの耳も溶けてしまうところだったよー」

「本当だね。おばあさんになにかお礼をしなくちゃね。」

「そうだねー、じゃあお菓子を作ってあげるのはどうだろー?」

「それはいい考えだね!作ろう作ろう!」

「でも僕たち、お菓子なんて作ったことないけど、上手に作れるかな?」

「少し不格好でも一生懸命作れば、きっと、喜んでくれるよ!」

​「そうだね!作ろう作ろう!」

二人は早速、助けてくれたおばあさんの為に、綺麗な色のアイシングクッキーやチョコレートなど
可愛い姿のお菓子をいっぱい作り始めました。

ヴィヴとヴィフが一生懸命お菓子を作っていると
いつの間にか夜は明けていました。

「おやまあ!」

2匹の姿を見たおばあさんは、とてもびっくりした様子で言いました。

「この可愛いお菓子たちはあんたたちが作ったのかい?

なんて美味しそうなんだろう、ひとつもらってもいいかい?」

ヴィヴとヴィフはとても喜び

「もちろんだよ、これはおばあさんの為に作ったんだもの」
と言って、クッキーをひとつ、おばあさんに差し出しました。

おばあさんも嬉しそうに

「それは本当かい?嬉しいねえ。
ではありがたく頂くとしましょう」

おばあさんが、クッキーを一口かじりました。

ですが、クッキーは割れません。

手で割ろうとしても、熱い紅茶に浸してもクッキーは可愛い姿のまま
びくともしません。

ヴィヴとヴィフが不安そうにお互いの顔を見つめていると
おばあさんはこう言いました。


「きっとお前さんたちの食べてもらえなかったという残念な気持ちが
お菓子に伝わってしまったのかもしれないね。
食べられないのは残念だけど、それはそれでいいじゃないか。
綺麗に並べて飾っておこう」

ヴィヴとヴィフはとても嬉しそうに大きく頷きました。

「せっかくだからもっといっぱい作って、ここでお店を開いたらどうだね。
装飾洋菓子店なんて素敵じゃないか。」

ヴィヴとヴィフは飛び跳ねて喜び
おばあさんに何度もありがとうと言いました。

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